嶋田が思いついたことをテキトーに綴ります
ボールペンという筆記具は、誰でも日常的に使用する物ですね。学校でノートを取ったりする際には鉛筆やメカニカルペンシル(シャープペンシル)を使用するのが一般的だと思いますが、社会人となると、ボールペンが通常の筆記具となります。鉛筆は容易に消すことができる点がメリットですが、半面容易に改竄できるわけで、公文書、保存文書等には使用できません。なので必然的に、鉛筆系の使用は減ってしまいます。今流行の消せるボールペンも、本来なら勉強やメモ等に使うべきで、書類等に使用するのは厳禁です。私は万年筆派ですが、万年筆に至っては持っている人の方が少数派。あるいは昔使っていた奴がどこかにあるはずだけど・・というような状況でしょう(もっとも、顔料インクの万年筆は、耐候性が高い上に改竄が極めて難しいことから、見直されても良い気はします)。
さて、そのボールペンですが、インクタンクの先端にカシメ(ボールを装着している部分)とボールが取り付けられ、ボールが回転するとインクを絡め取り、紙に転写する仕組みです。そしてインクには油性、水性、水性ゲルがあり、日本では油性ボールペン、水性ボールペン、ゲルインクボールペンなどと呼ばれますが、海外では、ボールペン(正確にはballpoint)と呼ぶのは油性インクの物だけで、水性インクの物はローラーボール、ゲルインクの物はローラーボールに含めたり、ゲルローラーなどと呼んだりします。ローラーボールは日本生まれですが、海外でその滑らかな書き味が受け入れられ、ボールペンよりも高級な物とされているようです。確かに万年筆、ボールペン、ローラーボールの揃っている商品は、万年筆>ローラーボール>ボールペンという価格設定になっていることが多いです。もっともローラーボールは基本的にキャップ式で、万年筆と似たような造りになっていることも関係しているでしょうが。一方私は、滑りすぎるローラーボールがあまり好きではないため、ローラーボールについて語れるほど使用しておりませんので、今回は油性ボールペンの話です。
油性ボールペンは、耐水性で滲みが生じない、文書の保存性が良好というメリットがある半面、色が鮮やかでない、書き味が重苦しい、掠れを生ずることがあるなど、使いにくい面もあります。書き味が重苦しい物はある程度筆圧をかけないと筆記できないため、疲れやすいという難点もありますが、ねっとりした感触を高級感と捉える向きもあり、確かにBICのねっとりしたボールペンを好んで使っている人もいます。しかし今は、三菱鉛筆のジェットストリームとか、ぺんてるのビクーニャ、パイロットのアクロボールなど、書き味がさらりとして滑らかな、低粘性油性ボールペンが主流となりつつあります。ところがこれが、私にとっては困りもの。そう、書き味がローラーボールに近く、私には扱いにくいのです。何故かというと、止めが利かない。線をぴたっと止めるつもりで書いても、上手く止まらず長くなってしまう、あるいは平仮名や数字を書く時でも丸い線が大回りになってしまい、不格好になってしまう。字が汚くなるだけならともかく、後で読み返そうとした時にこれ何て書いたんだっけ?って事になってしまうのです。だから私は、三菱鉛筆のD1芯を使うにしても、ジェットストリームではない従来の奴を買ってくるのです。業者から企業ロゴ入りのボールペンをもらったりしても、ジェットストリームの場合は同僚にあげちゃいます。使わないから。万年筆なら大抵の物を使いこなす私ですが、ボールペンに関してはかなり好みの範囲が狭いです。
そのジェットストリームは、三菱鉛筆のボールペン嫌いの社員が開発したと聞いております。だったら何故、三菱鉛筆に入社したのか?とも思いますが、そこはさておき、ボールペンの欠点を見事に改良した点は素晴らしい。全部がジェットストリームになってしまったら、私にとっては余計なことしやがってとなりますが、従来のボールペンも作っていますから、嫌ならそちらを選べばよい。ところでインクの低粘性化はそれ以前から研究されており、1980年代にはウォーターマンが抜群の滑らかさと称えられ、1990年代にはそれを超えるカランダッシュのGOLIATHが世界一滑らかと言われました。今でもGOLIATHのファンは多く、私にとってはこれ以上滑らかだと使いにくいという限界ラインがこのGOLIATHです。
個人的な見解ではウォーターマンとカランダッシュのボールペンが書きやすいですが、一番好みなのはシェーファーの中字。ボール径が1.0mmですから、日本では一般受けしないでしょう(日本で主に使われているのは0.7mm以下)が、私は書き味の良い中字レフィルを好みます。そして、軸はあまり太くなく、その割に重い物を好みます。シェーファーならインテンシティですね。軽いとどうしても押しつけて書かざるを得なくなり、疲れてしまうのです。重い軸は自重で紙に押しつけられるため、そんなに筆圧をかけずに書けるというのが良いのです。
国産品では一番好きなのがセーラー万年筆のボールペン。セーラー万年筆は万年筆メーカーというイメージが強いですが、ボールペンを日本で初めて発売したメーカーとされ、何気にボールペンも良いですね。ボールペン業界ではそんなにメジャーではない印象ですが、替え芯の性能は良いですし、変に滑らかさを追求していないところがまた好み。私的には隠れた名品認定をしたいところです。
さて、突然話は変わりますが、ボールペンは100円のやつで十分です。性能は高いのと大して変わらないですからね。それどころか高級ボールペンなんて見栄えだけで、ジェットストリームが一番書きやすいなんて言う人も多いですし、滑りすぎるのが嫌でなければまさにその通りです。ただ、私の場合は少し重めの軸というのがネックで、100円ボールペンはほとんど使っておらず、ちょっとお高くなりますが、真鍮軸のやつを愛用しております。
でも、これまた私見ですが、社会に出たら、ある程度見栄えの良いボールペンを一本持っておくと良いと思います。今ではモバイルパソコンとかタブレットでメモを取る人も多いですが、私は商談の際はメモ用のノートに手書きします。しかも、ノートは見ずに筆記します。相手の話に耳を傾けながら、勝手に手が動くという感じですかね。で、その際にちょっと良いボールペンを使うのです。モンブランのように最低でも25,000円もするような物は、必ずしも必要ない(ステータス性は抜群ですが)。数千円の物で、見栄え良く、書きやすいと思う物で良いのです。高級ボールペンって、かなりの部分が見せる物で、おっ、洒落たペン使ってるな、と思わせたりするのが狙いです。なので、あまりゴテゴテとした装飾的な物は必要ありません。無難なのは黒・銀色装飾とかあまりピカピカでない銀色ですかね。そういう物を使っているだけで、ちょっと印象が違うというだけの話ですけど。
個人的にお勧めなのはウォーターマンのメトロポリタンですが、半額以下のアリュールでも良い気がします。ただ、替え芯が独自規格というのはネックですかね。自由度が高いのはパーカーのボールペンで、替え芯はISO 12757-2 G2(俗にパーカータイプ)という共通規格で、書き味が気に入らなくても他メーカーから同じ規格の替え芯が多数出ており、好きなのを選べるという利点があります。国産ならもっと安く、見栄えの良い物が多数出ておりますので、店頭で色々と使い比べ、自分に合った物を選ぶと良いでしょう。通販では書き比べができないというのが難点です。評判が良くても自分には合わなかったなんて事もありますから、特に最初の一本は店頭で選ぶべきというのが私の考えです。
とまあ、まとまりのない記事になってしまいましたが、武漢コロナの記事ばかりになってしまったので、たまにはこんな話しも良いかと思いまして。
ここのところ忌まわしい武漢コロナウイルスの件を書き綴ってきましたが、ここらで気分転換に、万年筆の話を。今回はパイロットの軟調ニブについて書いてみます。
パイロットは日本が誇る筆記具・文具メーカーで、万年筆の生産量も日本一。ペンポイントの研ぎの精度は世界一と言われ、品質の良さ、個体差の小ささも世界最高水準を誇ります。そして、軸、装飾部品、ニブ、ペン芯、そしてペンポイント用のイリジウム合金と、万年筆の全てを自社で生産しているのは、世界でもパイロットだけです。かつてはシェーファーもそうだったのですが、2008年に自社工場を閉鎖。イリジウム球を生産しているのは、パイロット以外ではドイツのヘラウス社(貴金属屋)のみだということです。
パイロットの万年筆は、カスタムシリーズなどオーソドックスな物も多いですが、キャップの無いキャップレス、全品軟調ニブのエラボー、ニブの硬さを調整できるジャスタスなど、個性的な商品も結構出しています。
そしてニブの種類も豊富で、カスタム742、カスタム ヘリテイジ912には、以下の15種類がラインナップされています。
通常ニブ:極細字、細字、中細字、中字、太字、極太字
軟調ニブ:細字軟、中細字軟、中字軟
特殊ニブ:スタブ、ミュージック、ポスティング、ウェーバリー、コース、フォルカン
通常ニブは比較的硬めで今風の感触、軟調ニブは軟らかく作られたニブです。スタブは縦線が太く横線が細いタイプで、ミュージック(音譜用)は縦線がさらに太く切り割りが2本入っています(音譜を書く際にはペンを横に向けて構え、縦線を細く、横線を太くして使います)。ポスティングは先端が下を向いた極細字で簿記用、ウェーバリーは先端が上に反り返った中字で当たりが柔らかいニブ、コースはどんな角度で書いても極太字で書けるニブ。そしてフォルカンは極軟調中細字です。
嶋田はハード調の万年筆も使いますし、メモ取りをする時などは、何も気にせずに使えるハード調ニブが重宝しますが、家でゆったりと、気ままに書き綴るような時には、柔らかなニブも使います。全般的に言うと、それぞれの万年筆に合わせた書き方ができるのですが、逆に言うとあれも良い、これも良いと、どんどん万年筆が増えていくことにもなってしまうのです・・。
さて、本題の軟調ニブです。うちにあるパイロットの軟調ニブは全部で4本。その内の3本がこれらです。
上からエラボー樹脂軸 ブラック 細字軟
カスタム742 ブラック フォルカン
カスタム ヘリテイジ912 ブラック 細字軟
ちなみにもう一本はカスタム ヘリテイジ91 ブラック 細字軟で、ヘリテイジ912を一回り小さくし、ニブも少し小さくなりますが、デザインはほぼ共通です。
そして肝心なニブはこのようになっています。右からエラボー、カスタム742、ヘリテイジ912です。
エラボーのニブは先端部分がぼこっと膨らんだ、独特の形状です。そしてカスタム742とカスタム ヘリテイジ912は姉妹品でして、ニブは同じ14K10号で、軸とキャップの形状、装飾の色(金/銀)、ニブのロジウムコートの有無の違いなのですが、同じ14K10号ニブでも、フォルカンだけは他よりも細く作られています。そして、ニブの両サイドが半円形にえぐり取られています。さらによく見ると、ヘリテイジ912の細字軟ニブには飾り彫刻がありますが、フォルカンには刻まれていません。エラボーのニブにも飾り彫刻はありません。飾り彫刻はニブのデザインとして入れるものなのですが、ニブの撓りを邪魔するため、エラボーやフォルカンには刻まれていないということです。
エラボーの細字軟とカスタム ヘリテイジ912の細字軟。同じ細字軟(SF)という標記ですが、この二つはだいぶ性質が違います。ヘリテイジ912の細字軟は、腰のない感じで、筆圧がかかるとすっと切り割りが開き、自然に抑揚が付きます。一方、エラボーの細字軟は、筆圧がかかると切り割りが開くのは同じなのですが、反発が強く、筆圧を下げるとすっと戻ります。こちらは意図して筆圧を加減し、字に抑揚を付けるための物で、感触も違えば用途も違います。
そしてフォルカンは、極端に柔らかく腰のないニブで、わずかな筆圧変化にも敏感に反応し、切り割りがすっと開きます。どんな万年筆にも合わせた書き方ができると豪語する私ですが、最も慣れるのに時間がかかったのがこのフォルカンです。当然ながら筆圧が強い人には全く不向きで、不用意に使うとニブを曲げてしまいそうです。実際、横浜の某百貨店に入っている某店の売り場では、カスタム742の試し書き台が置いてあるのですが、フォルカン(FA)のみ外されており、FAをお試しの方は店員にお申し付け下さいと書かれています。多分壊されたのでしょうね。それほど繊細なニブなのです。また、ペンを立て気味にして書く人にも向きません。十分に寝かせて書いて下さい。軟調ニブは大体そうなのですが、フォルカンは特にです。
万年筆をこれだけ使っている私ですが、最終的に行き着いた先がこのフォルカンだったような気がします。でも、最初にフォルカンを手にしていたら、万年筆って何て扱いづらい筆記具なんだ! と、投げていたかもしれませんね。でも、慣れると書き味は抜群です。
フォルカンニブは、カスタム742、カスタム ヘリテイジ912の他、ワンランク上のカスタム743(14K15号ニブ)にラインナップされています。興味のある方は一度手にしてみて下さい。ただし、絶対に強い筆圧はかけないように。
プラチナ萬年筆が2019年、限定品として発売した「富士旬景シリーズ #3776センチュリー 六花」。えらい人気で発売前から予約完売状態。残念ながら入手できませんでした。
手元にないので画像もありません。なので「プラチナ萬年筆 六花」で検索してください。とにかく綺麗。ベースは#3776センチュリーですが、透明度の高い樹脂に雪と氷をイメージしたカットが施され、富士五湖シリーズ、ニースシリーズ、そして他の富士旬景シリーズと並べても、これが断然美しい(個人的感想です)。
ところが既に万年筆にまみれた生活をしている私は、もはや購入をセーブせざるを得ない状況となっており、意識的に万年筆の新作情報を遮断していたため、これに関しては完全に出遅れておりました。しかもですよ・・プラチナさんてば、海外に多く流し、国内流通量は少なかったとか。大量生産してしまったら限定品としての有り難みが薄れてしまうし、そもそも国内産大メーカーの中では一番小さな会社で、こればかり生産していたら定番品が今でさえ追いついていないのに、さらに追いつかなくなる。事情は分かりますがね、国内流通分はこれまで通りの数を確保して頂きたかったな。
もう既に、行きつけの中古屋さんには流れ始めていますが、こんなのネットに上がった直後にSOLD OUTですよ。店頭に並ぶ事はありません。店頭で現物を見て決める私の手に回ってくるのは何年後になるのか・・。初回生産とかシリアルナンバーとか全く気にしないので、追加生産してくれないかなぁ。
という万年筆おたくの恨み節でした。
今回紹介するのは、昨年日本に上陸したピナイダー(Pineider)。
イタリア フィレンツェの文具メーカーで、紙製品、筆記具、革製品などを販売しています。
創業は1774年ですが、日本に上陸したのは去年の秋。
各地でお披露目したようで、今では少しずつ取扱店が増えているようです。
そして現在のオーナーはダンテ・デル・ベッキオ氏。つまり、ヴィスコンティの創業者の一人です。
2017年にヴィスコンティを退任し、こちらを手がけるようになったとか。
販売しているのはLA GRANDE BELLEZZA GEMSTONES(ラ・グランデ・ベレッツァ・ジェムストーン)と
AVATAR(アヴァター)という2ラインですが、今後もう少し増えていくかもしれません。
今回紹介するのはジェムストーンです。
軸色は単色の黒と灰色、そして模様の入った青、緑、赤、黄の計6色ですが、
模様入りの方が売れているようです。
品名が「とても美しい宝石」という意味ですので、模様入りの軸の方がイメージに合っているでしょう。
ピナイダー ラ・グランデ・ベレッツァ・ジェムストーン タイガーイエロー 万年筆 細字
この色使い、そして磁石を使ったキャップロック。何となくヴィスコンティっぽい。
初めて見た時にそう思ったのですが、ベッキオ氏が絡んでいたのね。納得しました。
ただ、この磁石を使ったキャップロックは、ヴィスコンティのマグネティックロックとは若干違います。
マグネットツイストロック式といい、キャップが閉まった状態からネジ式のように胴軸を回すと、
磁石の反発によりキャップが浮き上がり、簡単に外れます。
そしてこの万年筆は、ペン尻にもマグネティックロックが仕込まれており、
こちらはどの向きでもカチッと填るようになっています。かなり考えられた造りですね。
そしてこのジェムストーンに使われている14KニブはQuill Nibという独特の物で、
写真のように、両サイドに切れ込みが入っています。
ハート穴も独特な形をしています。
Quillは羽根ペンのことで、羽根ペンのしなやかさを再現したのでしょうか。
パイロットのフォルカンのように大きく撓るわけでもなく、
ペリカンのスーベレーンM1000に比べても撓りは少ない印象ですが、
紙当たりは非常にソフト。
もっと撓るかと思っていたのでその点は拍子抜けした感がありますが、
書き味は非常に良い万年筆ですし、
撓りすぎない分、万年筆にあまり慣れていない人でも意外と扱いやすいと思われます。
海外の金ペンで、造りも凝っておりますので、お値段も・・なのですが、
万年筆が好きな方は是非一度触って頂きたい、と思えるほど、素敵な万年筆です。
あそこに行けば安く買えるし♪
プラチナ萬年筆は昨年、主力商品である#3776センチュリー(ゴールド装飾タイプ)の新色・シュノンソーホワイトとローレルグリーンを投入。キャップリングのロゴをエッチング加工することにより、文字を立体的に表現するなど、より高級感を持たせているが、価格は3,000円上がって13,000円。そしてそれに追従するように、従来からあったブラックインブラック(ミュージックを除く)、シャルトルブルー、ブルゴーニュも同様の仕様とし、13,000円で販売している。一方#3776センチュリー・ロジウム(ニブや装飾部品等、金属部分が全てロジウムメッキされた物)は、今のところ価格据え置きで15,000円。価格が上がったのはロゴをエッチング加工したからではなく、そもそも#3776センチュリーを10,000円で販売するのには無理があり、ついに音を上げたということだろう。#3776センチュリー・ロジウムは、ロジウムメッキ仕様にしただけで5,000円も価格が高くなっていたが、一応金メッキよりも耐久性が高いという理由付けはあるものの、ゴールド装飾タイプの価格を安く抑えていたため、ロジウム装飾タイプを高めの価格設定とし、こちらで利益を確保していたと考える。
そして国産万年筆の雄・パイロットも、昨年1月、一昨年までグランセNCとして販売していた物(スターリングシルバーを除く)をグランセに統合する形でリニューアルし、価格を2,000円上げて12,000円としてきたし、今年1月にはついに、主力商品であるカスタム74を2,000円値上げし、12,000円(コース、ミュージックは14,000円)となった。これは仕様変更されていないため、すでに新価格で販売されている。また、同時にカスタム74とは軸違いとなるカスタム ヘリテイジ91も12,000円に値上げしたが、こちらはクリップにロゴが入るなど仕様変更されており、昨年までの10,000円の物と、新しい12,000円の物が、店によっては混在している。
セーラー万年筆についてはだいぶ前に、主力商品であるプロフィットスタンダードを12,000円に値上げしていたが、それによって販売が伸び悩んでしまい、数年前にプロフィットスタンダードをコストカットする形で、プロムナードを10,000円で上市した。確かにニブのメッキが省略されているが、割とディテールにもこだわっており、本当にそれだけコストカットしているの?と疑問に思っていたのだが、プロフィットスタンダードを今更値下げするわけにもいかず、かといって2,000円の価格差は販売上不利だったため、コストカットしたと理由を付けて、他社と横並びの10,000円で投入してきたというのが真相だろう。セーラー万年筆については、今のところ価格に変更はないが、今後どうするのか?
つまりは、金ペン(ペン先が金合金で作られた万年筆)のエントリーモデルが10,000円という、お決まりの価格を維持すべく、各社無理をしていたわけで、ある意味ではどこが先に音を上げるかというチキンレースみたいな事をしていたのだ。でも金の価格が高騰したまま下がる様相を見せず、ついにその価格で販売し続けることに見切りを付けたという形になる。つまり、これまで無理をして安く出していたのを、ちゃんと利益が出る適正な価格にしただけの話だと思う。この不況の折(政府は景気拡大が続いていると言ってはいるが)、値上がりするのは万年筆マニアとしては出費が増えることにもなるのだが、そもそもそんなことを続けて経営が苦しくなるのでは元も子もない。
一方でプラチナ萬年筆は昨年夏、ステンレスニブで書き味が良く、使いやすいというプロシオンを投入してきているし、パイロットも昨年、グランセからステンレスニブの万年筆を発売し、今年はカスタムNSという、やはりステンレスニブの万年筆を投入してきている。グランセもカスタムシリーズも、これまでは金ペンのみのラインナップだったのに。この動きは金ペンの価格維持が難しくなっているため、ステンレスニブで書き味や使い勝手を追求し、手ごろな価格でありながら、上位品に迫る満足感と、金ニブに迫る耐久性を出そうと努力していることの現れだろう。セーラー万年筆は今後どう動くか、注目しているところだ。なお、ヴィスコンティは10年ほど前から金ニブを廃止し、23Kパラジウムニブを採用しているが、他社は採用していない。やはり金に替わる材質はそう簡単には見つからないのだろうか。
いずれにしても国産メーカーの値上げについては、これ以上従来の価格を維持できなくなったということだろうから、受け入れるしかない。無理して経営が悪化してしまっては困る。ところで近年、万年筆は値上げ、値上げで来ていたわけだが、中には無駄に高級化して無駄に価格を上げるということをやっていた海外メーカーもあるわけで、そういうメーカーに対しては「前のやつの方が好きだったな」と、ファンの目は結構冷ややかだったりする。某社のソネットなんか、新タイプも試し書きしてみたが、私としては首軸が樹脂の旧タイプの方が好きだ(書き慣れているせいもあるだろうが)。