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嶋田の戯言

嶋田が思いついたことをテキトーに綴ります

チキンレースの終焉

 プラチナ萬年筆は昨年、主力商品である#3776センチュリー(ゴールド装飾タイプ)の新色・シュノンソーホワイトとローレルグリーンを投入。キャップリングのロゴをエッチング加工することにより、文字を立体的に表現するなど、より高級感を持たせているが、価格は3,000円上がって13,000円。そしてそれに追従するように、従来からあったブラックインブラック(ミュージックを除く)、シャルトルブルー、ブルゴーニュも同様の仕様とし、13,000円で販売している。一方#3776センチュリー・ロジウム(ニブや装飾部品等、金属部分が全てロジウムメッキされた物)は、今のところ価格据え置きで15,000円。価格が上がったのはロゴをエッチング加工したからではなく、そもそも#3776センチュリーを10,000円で販売するのには無理があり、ついに音を上げたということだろう。#3776センチュリー・ロジウムは、ロジウムメッキ仕様にしただけで5,000円も価格が高くなっていたが、一応金メッキよりも耐久性が高いという理由付けはあるものの、ゴールド装飾タイプの価格を安く抑えていたため、ロジウム装飾タイプを高めの価格設定とし、こちらで利益を確保していたと考える。

 そして国産万年筆の雄・パイロットも、昨年1月、一昨年までグランセNCとして販売していた物(スターリングシルバーを除く)をグランセに統合する形でリニューアルし、価格を2,000円上げて12,000円としてきたし、今年1月にはついに、主力商品であるカスタム74を2,000円値上げし、12,000円(コース、ミュージックは14,000円)となった。これは仕様変更されていないため、すでに新価格で販売されている。また、同時にカスタム74とは軸違いとなるカスタム ヘリテイジ91も12,000円に値上げしたが、こちらはクリップにロゴが入るなど仕様変更されており、昨年までの10,000円の物と、新しい12,000円の物が、店によっては混在している。

 セーラー万年筆についてはだいぶ前に、主力商品であるプロフィットスタンダードを12,000円に値上げしていたが、それによって販売が伸び悩んでしまい、数年前にプロフィットスタンダードをコストカットする形で、プロムナードを10,000円で上市した。確かにニブのメッキが省略されているが、割とディテールにもこだわっており、本当にそれだけコストカットしているの?と疑問に思っていたのだが、プロフィットスタンダードを今更値下げするわけにもいかず、かといって2,000円の価格差は販売上不利だったため、コストカットしたと理由を付けて、他社と横並びの10,000円で投入してきたというのが真相だろう。セーラー万年筆については、今のところ価格に変更はないが、今後どうするのか?

 つまりは、金ペン(ペン先が金合金で作られた万年筆)のエントリーモデルが10,000円という、お決まりの価格を維持すべく、各社無理をしていたわけで、ある意味ではどこが先に音を上げるかというチキンレースみたいな事をしていたのだ。でも金の価格が高騰したまま下がる様相を見せず、ついにその価格で販売し続けることに見切りを付けたという形になる。つまり、これまで無理をして安く出していたのを、ちゃんと利益が出る適正な価格にしただけの話だと思う。この不況の折(政府は景気拡大が続いていると言ってはいるが)、値上がりするのは万年筆マニアとしては出費が増えることにもなるのだが、そもそもそんなことを続けて経営が苦しくなるのでは元も子もない。

 一方でプラチナ萬年筆は昨年夏、ステンレスニブで書き味が良く、使いやすいというプロシオンを投入してきているし、パイロットも昨年、グランセからステンレスニブの万年筆を発売し、今年はカスタムNSという、やはりステンレスニブの万年筆を投入してきている。グランセもカスタムシリーズも、これまでは金ペンのみのラインナップだったのに。この動きは金ペンの価格維持が難しくなっているため、ステンレスニブで書き味や使い勝手を追求し、手ごろな価格でありながら、上位品に迫る満足感と、金ニブに迫る耐久性を出そうと努力していることの現れだろう。セーラー万年筆は今後どう動くか、注目しているところだ。なお、ヴィスコンティは10年ほど前から金ニブを廃止し、23Kパラジウムニブを採用しているが、他社は採用していない。やはり金に替わる材質はそう簡単には見つからないのだろうか。

 いずれにしても国産メーカーの値上げについては、これ以上従来の価格を維持できなくなったということだろうから、受け入れるしかない。無理して経営が悪化してしまっては困る。ところで近年、万年筆は値上げ、値上げで来ていたわけだが、中には無駄に高級化して無駄に価格を上げるということをやっていた海外メーカーもあるわけで、そういうメーカーに対しては「前のやつの方が好きだったな」と、ファンの目は結構冷ややかだったりする。某社のソネットなんか、新タイプも試し書きしてみたが、私としては首軸が樹脂の旧タイプの方が好きだ(書き慣れているせいもあるだろうが)。

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プロフィール

HN:
嶋田友馬
性別:
非公開

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