嶋田が思いついたことをテキトーに綴ります
ここのところ忌まわしい武漢コロナウイルスの件を書き綴ってきましたが、ここらで気分転換に、万年筆の話を。今回はパイロットの軟調ニブについて書いてみます。
パイロットは日本が誇る筆記具・文具メーカーで、万年筆の生産量も日本一。ペンポイントの研ぎの精度は世界一と言われ、品質の良さ、個体差の小ささも世界最高水準を誇ります。そして、軸、装飾部品、ニブ、ペン芯、そしてペンポイント用のイリジウム合金と、万年筆の全てを自社で生産しているのは、世界でもパイロットだけです。かつてはシェーファーもそうだったのですが、2008年に自社工場を閉鎖。イリジウム球を生産しているのは、パイロット以外ではドイツのヘラウス社(貴金属屋)のみだということです。
パイロットの万年筆は、カスタムシリーズなどオーソドックスな物も多いですが、キャップの無いキャップレス、全品軟調ニブのエラボー、ニブの硬さを調整できるジャスタスなど、個性的な商品も結構出しています。
そしてニブの種類も豊富で、カスタム742、カスタム ヘリテイジ912には、以下の15種類がラインナップされています。
通常ニブ:極細字、細字、中細字、中字、太字、極太字
軟調ニブ:細字軟、中細字軟、中字軟
特殊ニブ:スタブ、ミュージック、ポスティング、ウェーバリー、コース、フォルカン
通常ニブは比較的硬めで今風の感触、軟調ニブは軟らかく作られたニブです。スタブは縦線が太く横線が細いタイプで、ミュージック(音譜用)は縦線がさらに太く切り割りが2本入っています(音譜を書く際にはペンを横に向けて構え、縦線を細く、横線を太くして使います)。ポスティングは先端が下を向いた極細字で簿記用、ウェーバリーは先端が上に反り返った中字で当たりが柔らかいニブ、コースはどんな角度で書いても極太字で書けるニブ。そしてフォルカンは極軟調中細字です。
嶋田はハード調の万年筆も使いますし、メモ取りをする時などは、何も気にせずに使えるハード調ニブが重宝しますが、家でゆったりと、気ままに書き綴るような時には、柔らかなニブも使います。全般的に言うと、それぞれの万年筆に合わせた書き方ができるのですが、逆に言うとあれも良い、これも良いと、どんどん万年筆が増えていくことにもなってしまうのです・・。
さて、本題の軟調ニブです。うちにあるパイロットの軟調ニブは全部で4本。その内の3本がこれらです。
上からエラボー樹脂軸 ブラック 細字軟
カスタム742 ブラック フォルカン
カスタム ヘリテイジ912 ブラック 細字軟
ちなみにもう一本はカスタム ヘリテイジ91 ブラック 細字軟で、ヘリテイジ912を一回り小さくし、ニブも少し小さくなりますが、デザインはほぼ共通です。
そして肝心なニブはこのようになっています。右からエラボー、カスタム742、ヘリテイジ912です。
エラボーのニブは先端部分がぼこっと膨らんだ、独特の形状です。そしてカスタム742とカスタム ヘリテイジ912は姉妹品でして、ニブは同じ14K10号で、軸とキャップの形状、装飾の色(金/銀)、ニブのロジウムコートの有無の違いなのですが、同じ14K10号ニブでも、フォルカンだけは他よりも細く作られています。そして、ニブの両サイドが半円形にえぐり取られています。さらによく見ると、ヘリテイジ912の細字軟ニブには飾り彫刻がありますが、フォルカンには刻まれていません。エラボーのニブにも飾り彫刻はありません。飾り彫刻はニブのデザインとして入れるものなのですが、ニブの撓りを邪魔するため、エラボーやフォルカンには刻まれていないということです。
エラボーの細字軟とカスタム ヘリテイジ912の細字軟。同じ細字軟(SF)という標記ですが、この二つはだいぶ性質が違います。ヘリテイジ912の細字軟は、腰のない感じで、筆圧がかかるとすっと切り割りが開き、自然に抑揚が付きます。一方、エラボーの細字軟は、筆圧がかかると切り割りが開くのは同じなのですが、反発が強く、筆圧を下げるとすっと戻ります。こちらは意図して筆圧を加減し、字に抑揚を付けるための物で、感触も違えば用途も違います。
そしてフォルカンは、極端に柔らかく腰のないニブで、わずかな筆圧変化にも敏感に反応し、切り割りがすっと開きます。どんな万年筆にも合わせた書き方ができると豪語する私ですが、最も慣れるのに時間がかかったのがこのフォルカンです。当然ながら筆圧が強い人には全く不向きで、不用意に使うとニブを曲げてしまいそうです。実際、横浜の某百貨店に入っている某店の売り場では、カスタム742の試し書き台が置いてあるのですが、フォルカン(FA)のみ外されており、FAをお試しの方は店員にお申し付け下さいと書かれています。多分壊されたのでしょうね。それほど繊細なニブなのです。また、ペンを立て気味にして書く人にも向きません。十分に寝かせて書いて下さい。軟調ニブは大体そうなのですが、フォルカンは特にです。
万年筆をこれだけ使っている私ですが、最終的に行き着いた先がこのフォルカンだったような気がします。でも、最初にフォルカンを手にしていたら、万年筆って何て扱いづらい筆記具なんだ! と、投げていたかもしれませんね。でも、慣れると書き味は抜群です。
フォルカンニブは、カスタム742、カスタム ヘリテイジ912の他、ワンランク上のカスタム743(14K15号ニブ)にラインナップされています。興味のある方は一度手にしてみて下さい。ただし、絶対に強い筆圧はかけないように。
1. 無題
そうとも知らずに、若い頃はもっぱら外国製の万年筆ばかりでしたものねえ。
その頃は、なんとなく舶来信仰みたいなものがありましたものね。
もっとも、会社なんかでは、みんなパイロットだったから、そんなふうに思っていたのははげちゃんだけかもね(笑)
楽譜用の万年筆も使ったことあったけど、なんだか縦にしたり、横にしたりするのが面倒で、結局使わなくなっちゃいましたねえ。
それにしても、こんな細字の万年筆なんかがあったんですか。
へー、知らなかったですねえ。
昔はせっせと手紙なんか書いたし、年賀状なんかみんな手書きだったから、万年筆いつも使っていたけど、今は、年賀状も印刷だし、用件はみんなメールで済んじゃうしねえ。
だけど、また万年筆使ってみたいような気がしてきましたよ。
元々は、万年筆大好き人間でしたからね。