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嶋田の戯言

嶋田が思いついたことをテキトーに綴ります

黙っていても売れる

 「営業が何もしなくても注文が入る」。多分そんなことはないでしょうね。営業の方々は日々頑張っているのだと思いますし、これだけ売れているのであれば、もし売上が下がった時に何を言われるか怖い気がする。でも、ドイツの筆記具メーカー・ペリカンは、日本での売上は好調ですし、特別生産品ともなれば、あっという間に店頭から消えてしまうことも。だから何もしなくても売れるとか言われてしまうのでしょうね。羨ましい。うちの会社なんか売れないしボーナスも増えないし、ほんと、あやかりたいわ。えっ? お前が創る商品が悪いからだって? はい、そうですね(しゅ~ん)。でもねぇ、コアなファンの方はいるんですよ。親、子、孫の3代にわたってうちの商品をご愛用下さる方もいらっしゃいます。ただ、何と言ってもブランド力が低迷しているし、知名度も低いし、取り扱う店も少ない。昔は営業上がりのお偉いさんからよく言われましたよ。「黙っていても売れる商品を創れ」って。言い返してやりたかったですけどね。「では、営業の方々は必要なくなりますね」って。

 おっと、ペリカンの話でしたね。ペリカンは高級筆記具を扱っているお店であれば大抵何かしら置いてあります。小さな売り場だとクラシックM200シリーズとスーベレーンM400シリーズだけの所もありますし、町の文具店の一角の小さな売り場ですと国産しか置いていない店もあったりしますが、大きな売り場ならスーベレーン全サイズ全色が並んでいたりします。パーカーやウォーターマン、アウロラが並んでいるのにペリカンは一本もないって売り場は見たことがないですね。海外ブランドを扱う店では外せないブランドです。昔なら店主の好みで「うちは海外品はパーカーとシェーファーだよ」みたいな店があったかもしれませんが、今ではネットで万年筆を調べれば、ペリカンがすこぶる評判が良いことくらいすぐに分かりますから、選択候補に挙がってくる。だから売れる。売れればお店に置く。専門店で私が色々見ている間に、ペリカンが数本売れるなんていうこともありますね。本当によく売れています。

 何故そんなに売れているかと言えば、やはりそれは書き味の良さ、品質の良さ、ほとんどが吸入式万年筆であること、オーソドックスな形状に独特のカラー(好き嫌いはあると思いますが)、そして値頃感なのでしょうか。いえ、結構高い物ですよ。モンブランの同クラス品と比べれば、お手頃感があるということです。それと、重要なのがその豊富なサイズでしょうか。それと、モンブランと違い、児童用や入門モデルもちゃんと出しています。

 でも、私はすぐには飛びつかなかったですね。他にも理由はありましたが、長所であるはずの豊富なサイズが、どのサイズにするか迷うことにも繋がったのです。

    ペリカン スーベレーン
    上からM805ヴァイブラントブルー(限定品)、M600ボルドー、M400緑縞
    M805は私の、M600とM400はとある人の所有物。

 ペリカンの主な万年筆を以下に挙げます。

  スーベレーンM1000 長さ147mm/177mm 軸径16mm 35g 吸入式 18Kニブ
  スーベレーンM800  長さ142mm/167mm 軸径15mm 30g 吸入式 18Kニブ
  スーベレーンM600  長さ134mm/153mm 軸径13mm 18g 吸入式 14Kニブ
  スーベレーンM400  長さ127mm/150mm 軸径12mm 15g 吸入式 14Kニブ
  スーベレーンM300  長さ110mm/129mm 軸径10mm 11g 吸入式 14Kニブ
   クラシックM200  長さ127mm/150mm 軸径12mm 14g 吸入式 ステンレスニブ
   クラシックP200  長さ127mm/146mm 軸径12mm 13g 両用式 ステンレスニブ

  長さはキャップを閉めた状態の長さ/キャップを抜いてペン尻に挿した時の長さです。
  これらは全て金装飾ですが、M805,M605,M405,M205,P205という銀色装飾の物もあります。

 M800は明らかに太いですし、ニブも大きい。そして重量も一気に増し、しかも後ろ側が重くなります。これは内蔵しているインク吸入機構が樹脂製から金属製に変わるためで、キャップを外したまま書いても後ろが重くなり、M800は首軸を持って書くのには少々扱いづらくなります。M800については、胴軸部分を持ってサラッと書くと非常に書き味は良いですが、購入を考えるのであれば、ある程度万年筆に慣れてからにした方が良いと思います。M1000も同じですが、M1000はニブが柔らかく、少しの筆圧変化で字幅が太くなったりします。表情豊かな字をゆったり書くのには向きますが、常用するにはM800の方が向いていると思います。

 逆に最も小さいM300は手帳サイズまたはショートサイズと呼ばれる万年筆で、手帳と共に持ち歩いて使うのが主目的になり、常にデスク上で使うには小さすぎるでしょう。それと、私はスーベレーンではM300のみ触ったことがないのですが、ニブは軟らかいという話です。基本的には2本目以降で検討するのがよいでしょうね。

 というわけで、M800とM1000は万年筆に慣れた人向き、M300は手帳サイズで、一般筆記用として万人に向くのはM400とM600ということになります。で、この2つですが、ペンを収納した状態ではは7mmほど長さが違いますが、キャップをペン尻に差した時の長さは3mmしか違いません。本当に微妙な差です。軸径はM600の方が1mm太いだけです。重量は3gほど違うものの、どちらも樹脂軸として通常の範囲内ですから、重すぎたり軽すぎたりして使いづらいということはありません。ただ、こんなに微妙な差なのですが、実際手に持って書いてみると、なるほどと思います。このわずか1mmという軸径の差、椅子に座って机上で使うのにはM600の方が満足感がありますが、手帳を手に持って筆記したりする場合は、M400の方が取り回しが良い。しかも机上で使うのには明らかに物足りないという感じでもない。手の小さな方であればむしろM400の方が合うかもしれない。ちなみにニブはM600の方が硬いです。

 この2つは似通ったサイズですが、触ってみると、どちらも絶妙なサイズで作られていると感じますが、本当に微妙な差なので、どちらを選ぶかは非常に迷うところです。もちろんどちらかがジャストフィットするならばそれを選べばよいのですが、私見では、迷うようならM400で良いと思います。5,000円という価格差は魅力ですし、迷うということはどちらにも大きな不満がないということでしょうから、その程度の微妙な感覚であれば、使っているうちにM400のサイズやバランスに慣れてくるわけです。なお、万年筆が初めてという方や筆圧の高い方は、M200シリーズという選択肢もあります。サイズはM400と全く同じで、ステンレスニブ。金ペンらしく撓りのあるM400よりも、初心者や筆圧の高い方には扱いやすい物です。また、カートリッジ・コンバーター両用式のP200もあります。もちろんM200もP200もしっかりとした造りの万年筆で、万年筆マニアの方でもM200を好む方は多いです。

 と言いつつも、私が選んだのはM805でした。それはシェーファーのインテンシティやSGC300など、重量級の万年筆に慣れていたからで、これらに比べればM800の重量など大したことではないのですよ。しかも書き味はM400やM600よりも好みでしたし。それと、普段持ち歩いて使うとか、デスクで普段使い用の万年筆は、別にペリカンでなくても良い。その書き味にうっとりしながら書き綴るという変態的な趣味には、M800やM1000が良いような気がしたのです。

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 さて、そんなペリカンにも注意すべき点があります。まずは字幅。国産のパイロットと比べるとこの通り。



 パイロットの極細字はペリカンの極細字とは比べものにならないほど細い。それどころか細字も、ペリカンの極細字より細い。ペリカンは国産に比べ、全体的に2段階ほど太いのです。細字や中字といったら、もっと太いのは明白ですね。何故かと言ったら漢字を7mm罫に納めて書きたかったら、ある程度線が細くないと書きづらいですよね。一方アルファベットならこれより太くても十分に収まります。筆記する文字の違いが一番大きいですね。基本的にペリカンの極細字はパイロットの中細字程度らしいですが、個体によってパイロットの細~中くらいと、ややばらつきがあるようです。一方パイロットはばらつきが少ないメーカーで、大体こんな物だと思っていただいて結構です。私が購入したM805は、上の写真にあるようにパイロットの中細字と細字の間くらいで、ペリカンの極細字としてはやや細めの個体。そこもこれを購入した決め手の一つです。私は細字派なので。

 お次は個体差。万年筆には個体差が付きものですが、特にM400はペンポイントに段差があったり、切り割りがセンターから大きくずれている物があるようです。うちの品管なら間違いなく刎ねられるでしょうねぇ。売れている理由に書いた品質の良さとは矛盾するようですが、どうも近年そういう傾向があるようです。なので現品をよく見て購入しましょう。そして、ペリカンの万年筆は、調整することでとにかく劇的に変わるようなのです。人によっては調整することを前提として購入する方もいるとか。なので「ペリカン スーベレーン 書き味最高」とかいうネット記事が上がっていても、よく読んだら調整した物だったりとかします。無調整でも書き味は良いと思いますので、書き味についてもやはり、ご自分の手で確かめて下さい。

 要するに評判の良さを鵜呑みにしないことですね。つまり、この記事も参考にしないこと・・ってなっちゃいますなぁ(爆)

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コメント

1. 縞軸の注意点

ペリカン スーベレーンと言えば、縞軸がトレードマーク。
オーソドックスな黒軸もありますが、やはり人気なのは縞軸でしょう。
定番品では以下の物があります。
緑縞:M300,M400,M600,M800,M1000
青縞:M400,M405,M600,M800,M805
ボルドー:M400,M600
ホワイトトートイス:M400
ブラックストライプ:M405,M805

ところで黒軸にはインクの残量を確認する窓があるのですが、縞軸にはありません。
縞軸は光に透かして見ると、中のインクが見えるため、インク窓がないのですが、
中でも良く透けて見えるのはホワイトトートイスと緑縞です。

ところがこの縞軸、ちょっと注意すべき点がありまして、
万年筆を洗浄する際、この縞の部分を長時間水に漬けてはいけません。
2種類の樹脂を貼り合わせているのですが、吸水性や膨張率が異なるため、軸が変形してしまいます。

2. なつかしい、なつかしい

お誕生日おめでとうございます。
まだまだお若いですよね。
これからも、がんばっていい曲を作ってくださいね。

ペリカン、ペリカン、いやあなつかしい。
はげちゃんがはじめて持った万年筆ですよ。

あれは、高校生のころだから、今から60年も前のことですものねえ。
あのころのペリカンは、この写真のようなスマートな形じゃなくて
色は黒だけで、もっとずんぐりしてましたねえ。

でも、とても使いやすくて好きだったですよ。
あれ、結婚して家を出たときに、そのまま置いてきちゃったんですね。
ずっととっておきたかったなあ。

あの握り感、書き味感、よかったなあ。

3. 当ブログ初コメントありがとうございます

ありがとうございます。
こちらのブログにコメントが付くのは初めてです。

今でこそ万年筆ブームで、中高生くらいでもペリカンを使っている人はいるようですが、
当時の高校生でペリカンとは、通ですねぇ。
パーカーとかモンブランとは一味違った確かな物を選ぶとは。

ペリカンは1832年創業の老舗ですが、元々はインクメーカーで、
万年筆を発売したのは1929年と、ウォーターマンやパーカーと比べると新しい。
でもその頃からすでに、今と同様信頼性の高い吸入システムを作っていたというのだからすごいです。
縞模様の万年筆が登場したのは1950年頃ですから、はげちゃんが使っていた時代にはすでにあったはずですが、
もしかしたら輸入していなかったのかもしれませんね。
もしその万年筆が使える状態で出てきたら、結構なお値段が付くかも!?

モデル名がスーベレーンとなったのは1980年頃だと思いますが、基本設計はそんなに変えていないようです。
これがもう完成形なのだから、手を入れる必要はない。ドイツ人らしい考え方ですね。

もう今では万年筆は使わないということですが、同じシリーズのローラーボール(水性ボールペン)も出していますし(キャップを閉めると、万年筆とほぼ同じ形状)、
油性ボールペンの替え芯をデュポンのイージーフロー(サラサラの油性)とか、モンテベルデのジェルペン(水性ゲルインク)に替えて使うという手もあります。
とは言ってもボールペンは今や国産が最高と言ってもよいほど高品質なので、
あまりメリットはないですかね。高級品を使っているという満足感だけで。

プロフィール

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嶋田友馬
性別:
非公開

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