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嶋田の戯言

嶋田が思いついたことをテキトーに綴ります

白い山

 筆記具ブランドとしてあまりにも有名なモンブラン。1906年、ハンブルクの文房具店主、銀行家、ベルリンのエンジニアという三人によって万年筆の製造を始めたのがモンブランの始まりで、ブランドの代表作であり、なおかつ万年筆の王道とも言えるマイスターシュテュックは1924年に発売されています。当初、社名はモンブランではなかったようですが、早いうちからブランドのロゴとしてアルプス最高峰「モンブラン」の意匠を取り入れており、1934年、社名にもモンブランが使われるようになったそうです。以後、ドイツの一流メーカーとして優れた製品を生産・販売し続けますが、その評価がとりわけ高かったのは日本で、「モンブランはドイツで生まれ日本で育った」と比喩されることもあるようです。

 しかし、1980年代にはダンヒルに買収され、さらに1993年、そのダンヒルごとスイスのリシュモングループに買収されたことで、現在ではリシュモン傘下のブランドとなっています(カルティエなどもこの傘下です)。リシュモンの意向により、腕時計、革小物、香水などが主力となり、筆記具の生産は中核事業ではなくなっています。そしてかつては存在していたエントリーモデルは全部切り捨て、高級品のみのラインナップとなっております。ボールペンなら2万円台のも出してはいますが、万年筆は、公式オンラインショップを見ると、6万円以下のはありません。販売店も直営のブティックや百貨店、有名文具店などで、もはや町の文具店で見ることはほぼありません。いわゆる高級ブランドの商品でも、S.T.デュポンのように輸入筆記具協会に加盟しているメーカーであれば、発注すればどんなお店でも入荷しますが、モンブランは協会も脱会しており、正規の取扱店でしか扱えないのです。それどころか修理すら受け付けられないそうで、各地で行われるペンクリニック等でも、モンブラン製品については対応できないそうです。基本的にはブランドイメージに合わない店では販売しない。要するにシャネルのバッグを町の鞄屋では売っていないですし修理も出来ないのと同じことです。

 その路線変更は、ある意味では当たりだと思います。利益の上がらないエントリーモデルはやめて、顧客層を絞ってそこに注力するというやり方は、圧倒的なトップ企業でない限り、戦略的にはありですからね。トヨタが大衆車の生産をやめると言ったら「何考えてるの?」となりますが、スバルあたりが「大衆車から撤退して高級車路線に絞る」なんて戦略を打ち出したら、「勝負に出たな!」と思うでしょう。モンブランはもはや高すぎて私みたいな庶民には手を出しづらいブランドになってしまいましたが、私みたいなのは相手にせず、富裕層や、ステータス性を重んずる方々を相手にすればよいわけです。しかし一方で、昔から愛用していた人にとっては、釈然としないのも無理はないところですし、私のような天の邪鬼は「じゃあ私なんかが買ってあげなくても良いよね」と、拗ねて(笑)しまうわけです。

 それともう一つ気になる点が、東京のブティックでは商品の試し書きに応じていないという情報(地方では応じているらしい)。10年くらい前にブログに書かれていた記事を読んだことがありますが、マイスターシュテュック149の試し書きを希望したところ、146のテスター(試し書き用に用意したセット)で字幅を選び、購入していただく旨を伝えられたとか。つまり、大柄な149も、手帳サイズの114モーツァルトも、146で字幅を選んで買えってことか? それをやるならせめて、146の全字幅に加え、各モデルの細字か中字を揃えて、サイズ感とかバランス、そのモデル独自の書き味が分かるようにしてやらないと、とてもではないが手は出せない。そして出来ればこれから購入しようというモデルの欲しい字幅で試し書きをさせてもらいたいわけですし、商品にインクを付けるわけにはいかないと言うならば、せめて水を付けて水筆紙で試し書きくらいさせてよと言いたくなりますね。伊東屋とか丸善であれば、試し書きできることは分かっていますから、欲しければそういうお店で買えばいいと言われればそれまでですが、私にとってはそういう問題ではない。旗艦店でそういう方針を打ち出しているならば、そこの商品は買いたくはないですね。ペリカンのスーベレーンM400とM600なんて、大して大きさも違わないのに持った感じはやはり違うし書いた感じも違うのですよ。146と149ならもっと違うでしょう。それに万年筆は個体差も付きものですから、146のテスターで試して149を、その個体を試さずに購入するなんて、あり得ない。千円や二千円の物ならともかく10万ですからね。返品もきかないのでいざ買って使ってみたらイマイチ自分には合わなかったなんてことになったら目も当てられない。だからこの先、もしモンブランが欲しくなったら、銀座のブティックに行ってみようと思っています。他人様がブログで書かれた情報を鵜呑みにするのではなく、自分で確かめ、そしてそういう方針であるならば、モンブランには手を出さないでしょう。キングダムノート(新宿にある、新品も中古も扱っている万年筆店で、モンブランの新品も扱っている)で中古を購入するという選択肢も、今のところありません。但しこれはへそ曲がりな私の個人的な意見であって、モンブランはやめた方が良いなんて言っているわけではありません。やり方が気に入らないだけですから。

 さて、そのモンブランは、高級品と呼ぶのに相応しいのでしょうか? 見た感じの話ですが、定番品は軸色がほぼ黒で統一され、しかも黒の質感が素晴らしい。そして金やプラチナのメッキ処理も非常に上質な物に見えますね。メーカーの意向もあり他メーカーの物と一緒くたに展示されていることはほぼ無く、独立したモンブランコーナーが売り場で存在感を出しており、演出効果もあるでしょうが、それを差し引いても外観は文句なしに高級品でしょう。そして何よりそのステータス性です。昔から高級筆記具の代名詞のようなブランドでしたから、高級筆記具に興味のない方もモンブランとパーカーくらいはご存じの方が多いですし、キャップトップのホワイトスターは、「どうだ、モンブランだぞ」と言わんばかりの圧倒的な存在感ですね。そして肝心な書き味についてですが、残念ながら触ったこともない物を評価するわけにはいきません。しかし、昔から作家など文筆業の人たちに愛用されたという歴史から、とにかく頑丈で壊れない、長く書いても疲れないという特性は持っていたことでしょう。あの方々は決してペンの扱いが丁寧で、書き味を堪能しながら書くわけではありません。ひどいペンの扱いをする人も多く、それでいて壊れないのであれば、道具としては良い物なのでしょう。そこまでしか言えません。

 書き味に関しては、モンブランに限らず「昔はもっと良かった」という評価が、特に万年筆にはつきまといます。その中でも「昔の方が軟らかかった」という評価については、多くのメーカーがそうなのでしょう。ですがボールペンが筆記具の主流となり、筆圧の高い人が増えた現在、万年筆のニブが硬くなっていったのは必然的な流れで、悪くなったのではなく時代のニーズに合わせていったということです。今でも昔ながらの軟らかな万年筆だけを造っているとしたら、それはコアなファン層や、新規客なら筆圧の弱い人を対象とした物にならざるを得ません。パイロットのように軟調ニブをラインナップしたり、ペリカンのようにM1000とM300は軟らかいニブを使うというのは上手いやり方ですが、全部を昔ながらの軟らかさで造るのは得策とは言えないでしょう。

 でも私にはそこまでしか言えません。モンブランを持っていませんし、試し書きすらしたことがないですから。昔のように筆記具の最高峰という立ち位置であれば一本は手にしていると思いますが、今では高級ブランドという立ち位置で、そうなると私にとってあこがれの高級ブランドはS.T.デュポンなのですよ。高級ブランドの筆記具は専門メーカーに委託して生産する物が多い中、S.T.デュポンは軸のみならずニブまで自社製造しているとか。しかも注文すれば基本的にどこの店でも入荷しますし、試し書きだって出来ますからね。

 さて、万年筆マニアの端くれでありながらモンブランを使ったことすらないこの私が、いつかモンブランを手にする日が来るのだろうか???

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嶋田友馬
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