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嶋田の戯言

嶋田が思いついたことをテキトーに綴ります

コオロギ食について

 一頃よりは落ち着いたと思うのだが、コオロギを食べるということへの批判が続いている。発端は今年2月、徳島県のとある高校でのこと。食物科の生徒らがコオロギエキスを使用した大学いもを作り、希望した生徒がそれを試食した件である。前年の11月にコオロギパウダーを使ったコロッケを給食として希望者に提供した時はそうでもなかったが、今回は大炎上。様々な形でコオロギを食べることに関する批判が巻き起こった。
 
 なぜコオロギかというと、少ない飼料で効率よくたんぱく質を産生するから。牛や豚には大量の飼料が必要で効率としては決して良くないのだ。炭水化物は様々な穀物から摂取できるし、いざ足りなくなれば飼料用の穀物を主食に回す、いわゆる雑穀をも活用するなどして炭水化物源を確保することも可能だが、そうすると今度は牛や豚を飼育するための飼料不足に陥る。強力粉などはそこそこたんぱく質を含んでいるが、コメなどはたんぱく質の量としては不十分。トウモロコシもたんぱく質にトリプトファン(必須アミノ酸の一つ)がほとんど含まれておらず、たんぱく源としてあまり良いものではない。世界の人口が80億人に達し、今後も増え続けるとなると、いずれたんぱく源の不足が懸念される。魚だって無尽蔵に獲れるわけではない。だから効率よくたんぱく質を産生するコオロギに注目が集まったわけだ。
 
 だが、虫アレルギー(本当の意味でのアレルギーではなく)による拒絶反応なのか、コオロギなんか食べたくない、あんなもの食い物ではないなどと、あちこちから火の手が上がった。まあ、わかる気もするが、「希望する人」が試食したというのなら、別にそんなにいきり立つこともないと思うのだ。強制的に食べさせたり、コオロギを使ったことを隠して試食させたならともかく、わかっていて食べているなら問題ない気がする。ただ、エビ・カニアレルギーの人に対する注意喚起はあったのかな?とは思う。昆虫類はエビ・カニ同様キチンを含んでいるため、エビ・カニアレルギーの人は注意すべきだからね。エビ・カニアレルギーの人はやめておいて、と伝えた上で、希望者に試食させたなら何ら問題ない。
 
 コオロギにアレルギーのリスクがあるのは確かだが、それを言ったら28品目のアレルゲンを含んだ食品はすべて食べてはいけないことになる。小麦も大豆も卵も豚肉も鶏肉もアウトだ。そうなると食用油(注:例えば大豆アレルギーの人でも大豆油は問題ないとされる)とコメなどから採った純粋なでんぷんと、たんぱく質をアミノ酸にまで分解した物、あとはビタミンやミネラル。そういった物で食品を作るしかなくなる。そんなのは非現実的だし、食事の楽しみもなくなるだろう。
 
 漢方ではコオロギは微毒とされているとか、コオロギには発がん性があるなんて記事も見たが、ならば他の食品はすべて「漢方では無毒」なのか? コオロギに発がん性があるから食べてはいけないのなら、「おそらく発がん性がある」に分類される赤身肉も食べない方が良いだろうか? そんなことを言っていたらきりがない。
 
 また、昔からイナゴは食べていたがコオロギは食べていなかったのは美味しくないからだとか食中毒があったからだとか、様々なことを言われたが、私の考えは違う。イナゴは稲の害虫であり、大量発生すれば米の生産に影響することから、駆除する必要があった。大量に獲ったイナゴをどう処理するか、ということで佃煮にしたら意外とおいしかったので、食文化として定着した。一方コオロギは別に駆除する必要もなく、わざわざ獲って食用にすることがなかった。そういうことなのだと思う。私はコオロギパウダーそのものをほんの微量食べたことがある。確かに美味しくはない。だが、それを何かに混ぜて調理すれば、気にならないレベル。異様に臭くて微量でも鼻についてしまうとか、強烈に苦くて微量でも不味いとか、そんなものではない。たんぱく質を強化するために使うのはありだと思っている。
 
 コオロギは不衛生な環境で育ち、様々な菌を持っているから食べてはいけない。そういう人たちは、今すし屋で人気メニューとなっているサーモンをどう思っているのでしょう。サケ・マスの類ははるか昔から生食すべきでないということが知られていた。川魚にはやばい寄生虫が付いていることが多いからだ。サーモンは最初から海で養殖されているニジマスの類で、生食できるよう管理して養殖しているから食べられるのであって、天然のサケ・マスの類を生で食べてはいけないのは常識。ウナギの刺身を出す店も今はあるそうだが、その店は徹底した血抜きをして提供しているという。ウナギの血液には毒があり、生食不可なのだ(加熱すると毒は消える)。何が言いたいかというと、管理して養殖したコオロギをパウダーに加工したり、適切に調理して食べることに問題があるとは思えないということだ。厚労省が生食はしないように呼び掛けている牛レバーを生で食べようとする人が未だにいるようだが、生食してはいけないのは致死性が高い腸管出血性大腸菌がいることがあるからで、加熱調理すれば問題ない。加熱しても不可なのは活動状態にあるボツリヌス菌だが、あれがコオロギの体で活動中だったとも考え難い。休眠中のボツリヌス菌であれば、乳児と、抗生物質を飲み続けていた人に食べさせなければ問題はない。
 
 やはり根底にあるのは昆虫を食べるということへの抵抗感だろう。私はイナゴの佃煮を食べたことがあるし、割とおいしかったと記憶しているのだが、あの姿を見ただけで拒否反応を示す人は大勢いるだろう。でも私は川エビのから揚げ(大好き)だって、見方によっては昆虫と大差ないと思っているし、食べろと言われればセミの素揚げだって食べるだろう。そんなに抵抗はない。だが、周りにもけっこう虫嫌いの人はいる。そういう人たちにとっては原形をとどめているなんて以ての外だし、パウダーにして生地に混ぜたとしても、「元昆虫」というだけで拒否反応を示すだろうことは容易に想像できる。
 
 あともう一つ挙げれば、SDGsなどという意識高い系のごり押し的な社会情勢に対する抵抗感があるかもしれない。私なんか「きれいごとを並べたくったもの」としか思っていない。確かにそういう意識を持つことは大切だが、さも至上命令みたいにPRしまくるのは、イメージ戦略や、やっています感を演出するだけで、むしろ胡散臭く感じるのだ。脱炭素論なんて、例えばEVの開発でリードしている国や企業が、自国や自社が有利になるよう誘導しているくらいにしか思っていない。私は脱炭素よりも「省炭素」という考えの方が現実的だと思っているし、プラグインハイブリッドやダウンサイジングターボなど、いろいろなやり方があっていいと思うのだ。また、太陽光発電なんて不安定なものに頼らず、太陽光発電で得られた電力で水素を作ったり、その水素と火力発電所から排出される二酸化炭素で合成燃料を作るなどして、電力供給を安定させつつ、太陽光発電で得た電力を利用する方が良いとすら思っている。コオロギ食だって、そういう時代の流れから生まれたもので、現状ではコオロギを食べる必要性は必ずしもないわけで、抵抗感を持つ人がいるのも理解できる。
 
 一方、コオロギなんか研究するよりも廃棄食料を減らせだの、肉の生産を増やせ、魚を獲れなどという人もいる。廃棄食料を減らせは確かにその通り。だがそれだけで将来の食糧事情が改善するとも思えない。例えば主食のコメは現在、国内生産で需要を賄えるが、外国から小麦の輸入が激減したらどうだろうか。パンや麺類が米に代わる主食として定着しているから足りているだけで、パンや麺類が満足に供給されなくなれば米の需要が増え、現状の生産量では全く足りなくなるだろう。海外での小麦の不作、ウクライナが戦争状態で小麦の供給が激減という現況だけでなく、経済が停滞している日本が中国などに買い負けている状況で、未来永劫食料が海外から安定供給されるなどと考えない方が良い。肉の生産だって、配合飼料に加えるトウモロコシが十分に輸入できなければ話にならない。魚だってサンマの不漁に加え、サバの不漁でサバ缶の生産を停止している。一方でイワシは大漁だそうだが、それでも外国から肉や飼料の輸入が止まればタンパク源が不足する。大豆だって相当量は輸入に頼っている。たんぱく源の確保が難しくなってから慌ててコオロギの養殖を研究しても遅いので、今からやっておく必要はあると私は考えている。クジラやイルカを食べる方向にシフトしたら、きっと袋叩きにあうだろうし。
 
 なので、結論としてコオロギ食を否定するつもりはないし、今のうちから衛生的かつ効率的な飼育技術を確立しておくのは将来を見据えて必要なこと。一方でより安全性に関するデータ取りも並行して進めればなお良し。食糧難への対応なので、ある程度の助成も必要と考えるが、本当にコオロギ食が必要になった際に一部が利権をむさぼるようなことをさせないことが求められる。また、コオロギ以外にも有望なたんぱく源の開拓も必要かな。選択肢は多い方が良いし、中には日本人にとってあまり拒否反応が起こらない食材があるかもしれない。
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プロフィール

HN:
嶋田友馬
性別:
非公開

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