7月8日、3月末まで勤めていた研究所に行った。月一の報告書を作成する業務(これがかなりややこしい)の引継ぎ、というよりは、やり方と注意点は一通り伝授しており、今回は最終チェック的な。なので、OKならばもう研究所には行かないってことになる。で、大体OKだった。
でもそんなことはどうでもいい。元の勤め先の業務など詳細に書くわけにはいかないし、ピーがアホだとか書いたら企業秘密漏洩で損害賠償を請求される(笑)から、この話はここで終了。本題は研究所に行った際、同僚だったある素敵な女性から、映画のチラシを渡された件。「君は映画」という映画である。
この映画は京都の劇団・ヨーロッパ企画と、下北沢のミニシアター・トリウッドのタッグによる映画で、第1弾「ドロステのはてで僕ら」、第2弾「リバー、流れないでよ」に次ぐ第3弾。ちなみにドロステは海外で数々の賞を受賞しており、リバーは先日、二宮和也氏がシークレットシネマイベントで、人生でいちどは映画館で観てほしい一本として選んで上演し、話題になっていた。実は以前から、その素敵な女性からドロステとリバーは紹介されていたのですが、話題になっていたことだし、リバーはYカメラでブルーレイを販売しているのを知っていたので、帰りに立ち寄って購入し、家で見た。一言でいうとすげ~面白い。ってことで、「君は映画」も観てみようと思い、13日、下北沢を訪れたってわけ。
私は映画が嫌いではないが、映画館で見ることはほとんどなく、地上波で放送されるのを視たり、面白そうなやつはBDやDVDを買って視る。なぜかというと人混みが大嫌いだから。大きなシアターで満席になっていたら、そんなところに入る気にならない。でも、ネットで確認したらトリウッドはかなり小さなシアターらしく、かつ、予約状況を見てもほとんど埋まっていなかったので、それならばと平日に観に行ったってわけ。
下北沢は小田急小田原線と京王井の頭線が交わる乗換駅で、活気のある若者の街である(地名としては世田谷区北沢、代田、代沢にまたがる)。だが、実は乗り換えで何度も利用しているにもかかわらず、駅の外に出たのは初めてだった。狭い道路が多く、目印となるようなものが乏しいのだが、そこは私。家のパソコンでトリウッドの位置を確認してあったので、全く迷うことなくその場所に。でも、本当にここでいいのか? と、一瞬思ったね。このビルで良いはずだが・・と思いつつ2階に上がると、あった。ここ???って思うような場所にそれはあった。
「君は映画」は伊藤万理華(マドカ役)と井之脇海(カズマ役)のW主演で内容はというと・・
マドカは「下北沢エクソダス」という映画の主役で、かつ、カズマ主演の「三軒茶屋エスケープ」という映画をトリウッドで鑑賞する。
カズマは「三軒茶屋エスケープ」という映画の主役で、かつ、マドカ主演の「下北沢エクソダス」という映画をトリウッドで鑑賞する。
何じゃそりゃ??? 言葉にするとややこしいが、要するに互いを映画の中の人物として俯瞰して観ている存在なのだ。
物語はマドカがトリウッドを訪れるところから始まる。マドカは劇団の脚本家で、トリウッド隣のイングリッシュパブで小さな劇を上演し、客から評判をとっていたが、駅前の劇場でやろうという話になり、その脚本の創作に少々行き詰っていた。そこにマスターが登場し、三軒茶屋エスケープという映画のチラシを手渡す。
一方カズマは隣町・三軒茶屋(注:駅と駅は2kmほど離れているが、茶沢通り一本で繋がっている)でバンド活動をしており、リハの後はトリウッド横の居酒屋で飲み。だが、メンバーのミコシバはライブが近いっていうのにチケットを全然捌いておらず、態度もアレで、カズマとトラブルに。気まずくなったカズマが金を置いて帰る際に、店長から下北沢エクソダスという映画のチラシを渡される。
こうして二人はそれぞれ、違った映画を観にトリウッドにやって来る。で、他に客はいない。マドカが客席に座ると、スクリーンには客席に座っているカズマが映し出され、逆にカズマが客席に座ると、スクリーンには客席に座っているマドカが映し出される。カズマが「何?この映画」と切り出すと、マドカは「こっちでしょ、それ言いたいの」と応戦。カズマが「つまんねえ映画」とつぶやくと、マドカも「そっちだから、つまんねえ映画は」とさらに応戦。なぜか会話が噛み合っている。
で、カズマが下北沢エクソダスのチラシを取り出すと、そこにはマドカの絵や写真が、マドカが三軒茶屋エスケープのチラシを取り出すと、そこにはカズマの絵や写真が。マドカが「これあんたでしょ?早く始めてよ、映画」というとカズマは「映画を始めるのは君だよ」と返し、さらにチラシに書いてあるあらすじを読み上げる。「下北沢で演劇をやっているマドカは・・・」 おっと、それ以降は簡単に。その後二人はそれぞれの映画のチラシに書かれているトラブルに巻き込まれるが、あらすじを教え合って・・さらにパンフを買ってより詳細に・・で、二つの視点で映画は進行し、やがて混ざり合うことになります。
マドカのシナリオは、劇団崩壊の危機。カズマのシナリオはバンド解散の危機、ってか、ミコシバかなりやばい状況。二人はそれぞれ、これまでの人生をかけてきたものを失うかもしれない状況。それを、互いに協力しながら必死に打開していく。下北沢エクソダス(エクソダスは旧約聖書の出エジプト記)、三軒茶屋エスケープはそれぞれ、その場所からではなく今置かれた状況、運命から脱出するということか。
そしてあらぬ方向に展開していき、混ざり合った映画からマドカとカズマがついに抜け出す。するとトリウッドのポスターは「茶沢レジスタンス」に変わっており、どうやらマドカの盟友シホと、バンドマンのミコシバがW主演っぽい。で、二人で映画を観ながらマドカはシホについて「いい役者なんですよ」と語り、カズマはミコシバについて「練習すればギター超上手いのに」と語る。
ところでこの映画の聖地巡礼は、ほんの数分で終わる。マドカが拠点とするイングリッシュパブと、カズマがリハの後でメンバーたちと飲む居酒屋、その間に挟まれているのがミニシアタートリウッド。で、階下にはマドカとカズマが落ち合う古着屋CHICAGO。ほとんどがこの同じビルに入る4か所で撮影されているからだ。あとは茶沢通り脇の緑道付近か。
そんな狭い範囲で撮影されているのに、視点が入れ替わったりして、退屈させない作りになっている。そして、コンパクトにまとめているからこそ、それぞれのシーンが大げさに言えば人生の縮図に思えてくる。しかも映画を観るシーンは、まず映画の中のシーンを撮って、実際スクリーンに投影しながら撮影するという、アナログチックなやり方。別々に撮って合成するというやり方もあるだろうが、そこはこだわって作っているようだ。
そしてこの映画で一番思ったことは、マドカもカズマも人生かけてやってきたことが崩壊する危機を迎えているわけだが、それを面白がって観ている私がいるという事。マドカにとって、カズマにとって危機であり、不幸であるわけだが、他人の不幸は面白い? いやいや、それは脚本や演出でそう見せているだけで、俳優の不倫騒動を面白がって視るのとは違う・・と信じたい。何か、自分の人生なんて大したことないし、何ならろくなもんじゃないって感じだが、他人から見たら面白いのか? という感覚が自分にある。中の二人は真剣だ。先の展開を教えてもらうというズルをしてでも終わらせたくないという、切実な思いが伝わる。で、そこには「行き詰っても、煮詰まっても、誰かの助言から打開できるかもしれないじゃん」というメッセージが隠れているように思える。基本的にはコメディタッチな映画で笑える部分も多いが、なかなかに考えさせられる良い映画だと思った。
そして、マドカとカズマはこの先どうなるのだろう。きっと協力してシホや姫とその警護、ミコシバらを救い出しに行くだろう。そして、カズマは三茶でバンドを、マドカは下北で演劇を続けているだろう。仮にシホが裏切った(?)としても、マドカは笑顔で送り出すのだろう。で、マドカはカズマらのライブに、カズマはマドカらの演劇を観に、それぞれ行ったりしているのだろうか。そんなその後の展開を思い浮かべる私であった。あと、作業員のオジサンは上の人からこっぴどく怒られたに違いない(笑)。欲を言えば、マドカとシホ、カズマとミコシバの出会いとかの回想もあったらもっと良かったと思う。
私は役者さんの演技についてあれこれ言えるほど、映画やドラマ、演劇を観ているわけでもないし詳しくもない。広瀬アリスとか清原果耶が出演しているドラマを見て「すげえ、この人」って思う程度で。それでもあえて言うなら、上演中のシアターを出たり入ったりする二人に対し、イラっとしながら「またですか」とか「もう来ないでください」とか言うトリウッドの支配人(?)ヤマモト(演・諏訪雅)と、赤い工具箱を持ったとぼけた作業員(演・永野宗典)がいい味出していると思った。あと姫(劇団員ユウナ、演・菊池日菜子)の配役は納得だ。何か本当に姫っぽいオーラが。
で、件の素敵な女性に「観たじょ~」ってメールで報告したら「おお!まさかの!」ですって。本当に見に行くとは思っていなかったのか? それと、トリウッドのカウンターでドロステのBDを購入してきたのだが、まだ封を切っていない。月末から上演するようなので、空いていればそれを観に行こうと思って。
1. ミコシバはギター上手いのか?
いずれにしてもカズマがマドカに語っているように、真面目に練習すればすごく上手い・・のかな?