嶋田が思いついたことをテキトーに綴ります
食品添加物の中でも嫌われる物の一つに亜硝酸塩がある。ソーセージやハムなどに添加されている物で、原材料表示では「発色剤(亜硝酸ナトリウム)」などと記載されている。肉の色をピンク色っぽくし、しかもその色を長期間保つために添加される。別にどす黒く変色したって腐っているわけではないし、味も変わらないのだからこんな物添加する必要ないし、亜硝酸塩には体内で発がん性のあるニトロソアミンを生じる可能性があるのだから、こんな物を添加するのは悪! という論調ですね。
私は別に亜硝酸塩が入っていなくても構わないが、これを入れないのであれば、代わりに保存料(防腐剤)であるソルビン酸などを添加して欲しい。亜硝酸塩も防腐剤も入っていないソーセージなんて、食べる気にはならない。だがそのソルビン酸も、結構嫌われている。
ソーセージの本場であるドイツでは、19世紀には毎年のように、ソーセージによる食中毒で死者を出していた。ところが、亜硝酸塩が使われるようになってから、食中毒の発生は激減し、ほとんどゼロになったという。発色剤である事は確かなのだが、今では発色剤として入れているメーカーはほとんど無い。主たる目的は防腐剤で、そのついでに肉の変色を防いでくれるから、これを添加している。
ソーセージによる食中毒の原因は、どこにでもいて、なおかつ地上最強の毒素を産生する殺人細菌・ボツリヌス菌である。ボツリヌス菌が産生するボツリヌストキシンは、わずか1μg(0.000001g)にも満たない量で健康な成人を殺す、とてつもない猛毒である。青酸カリなんか比ではなく(青酸カリのおよそ20万倍の猛毒)、地球上にあるあらゆる毒の中でも最凶のもの。
ところが、ボツリヌス菌は酸素が大嫌いで、通常は芽胞という殻に閉じこもった状態でそこら辺の土の中にいる。そして実は、蜂蜜の中にもいる。100種類くらいの蜂蜜を買ってきて調べてみると、3つか4つくらいから見つかるだろう。でも、蜂蜜の中ではやはり芽胞の状態で存在する。糖の濃度が高すぎて、蜂蜜の中で菌は繁殖できない。砂糖水はすぐにカビが生えるが、砂糖自体はカビも生えず、賞味期限すら設定されていない。それと同じ理屈だ。で、もしその芽胞が体内に入ったとしても、他の腸内細菌がうようよいる状態ではやはり活動できず、そのまま排泄されるから、問題は起こらない(ただし乳児や抗生物質を大量に投与され続けた直後の場合は、腸内細菌叢が十分にできていないため発芽する場合がある。蜂蜜を乳児に与えてはいけないのはそのためだ)。
ただし、その芽胞というのが困りもので、この状態では100℃で1~2時間加熱したって死なない。だからこれを除去する事は難しい。で、ソーセージに加工すると、腸詰めの中身は酸素と触れないわけなので、いよいよこいつらに好都合な環境になる。発芽して増殖し、その過程で猛毒を産生する。ボツリヌスというのは、ラテン語でソーセージの意味なのだ。この毒素は80℃30分、あるいは100℃で数分の加熱で不活化するが、中心部分までその温度と時間に達するためには、軽くボイルしたり焼いたりするだけでは不十分。だからと言って沸騰する湯の中で10分以上茹でたり、表面が消し炭になるまで焼いたりしたら美味くも何ともない。
もちろん徹底的な衛生管理をした上で、こうした添加剤を無くしている企業もあるかもしれない。その心がけは立派ではあるが、それであっても私は、亜硝酸塩かソルビン酸、どちらかは添加して欲しい。どんなに衛生管理をしたって、人間のやる事。完璧はあり得ない。
亜硝酸塩は発がん性のあるニトロソアミンを生ずる可能性がある。ソルビン酸にも変異源の可能性がある・・これが曲者なわけで、毎日のようにこれらが添加されたものを食べても、高齢になるまで健康で暮らせる人もいるわけで、実に評価が難しい。そもそもがん細胞なんか常日頃から体内で発生しており、それをナチュラルキラー細胞などがやっつけるということを日々繰り返している。赤身肉などは発がん性が恐らくあるという評価であるが、赤身肉を食べたからガンになるという事ではない。一方、万が一ボツリヌス菌に汚染されてしまったソーセージを食べてしまったら、高い確率で死ぬ。死なないまでも、ボツリヌス症を発症してしまったら、神経系の後遺症が残るだろう。亜硝酸塩やソルビン酸を添加しておけば、例え混入したとしても、その繁殖を抑える事ができるのだ。亜硝酸塩やソルビン酸のリスクとボツリヌス菌のリスクのどちらが高いか、その選択になるわけで、私はボツリヌス中毒で死ぬ方が嫌だ。そういう話である。
亜硝酸塩については発色剤、肉の色を綺麗に保つための物。こんな物を使うのはけしからんという論調だが、その人たちはこれが添加されている本当の理由が分かっているのかね。すごく疑問に思うのだ。
私の周りにこんな人はいないけど、もし私の知り合いが手作りでソーセージを、しかも無添加で作って、それをお裾分けしてくれたら、申し訳ないけど食べずに捨てます。ボツリヌス菌はどこにでもいる、殺菌が難しい、毒素は最凶。私は亜硝酸塩やソルビン酸の入っていないソーセージは信用しない。
今回紹介するのは、昨年日本に上陸したピナイダー(Pineider)。
イタリア フィレンツェの文具メーカーで、紙製品、筆記具、革製品などを販売しています。
創業は1774年ですが、日本に上陸したのは去年の秋。
各地でお披露目したようで、今では少しずつ取扱店が増えているようです。
そして現在のオーナーはダンテ・デル・ベッキオ氏。つまり、ヴィスコンティの創業者の一人です。
2017年にヴィスコンティを退任し、こちらを手がけるようになったとか。
販売しているのはLA GRANDE BELLEZZA GEMSTONES(ラ・グランデ・ベレッツァ・ジェムストーン)と
AVATAR(アヴァター)という2ラインですが、今後もう少し増えていくかもしれません。
今回紹介するのはジェムストーンです。
軸色は単色の黒と灰色、そして模様の入った青、緑、赤、黄の計6色ですが、
模様入りの方が売れているようです。
品名が「とても美しい宝石」という意味ですので、模様入りの軸の方がイメージに合っているでしょう。
ピナイダー ラ・グランデ・ベレッツァ・ジェムストーン タイガーイエロー 万年筆 細字
この色使い、そして磁石を使ったキャップロック。何となくヴィスコンティっぽい。
初めて見た時にそう思ったのですが、ベッキオ氏が絡んでいたのね。納得しました。
ただ、この磁石を使ったキャップロックは、ヴィスコンティのマグネティックロックとは若干違います。
マグネットツイストロック式といい、キャップが閉まった状態からネジ式のように胴軸を回すと、
磁石の反発によりキャップが浮き上がり、簡単に外れます。
そしてこの万年筆は、ペン尻にもマグネティックロックが仕込まれており、
こちらはどの向きでもカチッと填るようになっています。かなり考えられた造りですね。
そしてこのジェムストーンに使われている14KニブはQuill Nibという独特の物で、
写真のように、両サイドに切れ込みが入っています。
ハート穴も独特な形をしています。
Quillは羽根ペンのことで、羽根ペンのしなやかさを再現したのでしょうか。
パイロットのフォルカンのように大きく撓るわけでもなく、
ペリカンのスーベレーンM1000に比べても撓りは少ない印象ですが、
紙当たりは非常にソフト。
もっと撓るかと思っていたのでその点は拍子抜けした感がありますが、
書き味は非常に良い万年筆ですし、
撓りすぎない分、万年筆にあまり慣れていない人でも意外と扱いやすいと思われます。
海外の金ペンで、造りも凝っておりますので、お値段も・・なのですが、
万年筆が好きな方は是非一度触って頂きたい、と思えるほど、素敵な万年筆です。
あそこに行けば安く買えるし♪
本件につきましては議論をしたところで平行線になることは明らかでありますので、反論は無視します。
今日の報道によると、和歌山県太地町における追い込み漁について、某動物愛護団体代表が、「クジラやイルカが苦痛の多い方法で殺害されているのは動物愛護法に違反している」として、和歌山県知事、県を相手に漁の許可取り消しを求める訴えを起こしたとか。こともあろうに太地町の住民も原告の一人として加わっているとか。そこで育った住民だとしたら情けない話だね。オーストラリアのイカレたイルカ保護団体も支援しているとか。「多くの日本人はイルカを魚と認識し、イルカには動物愛護法が適用されないと勘違いしている。この訴訟ではイルカは魚類ではなくほ乳類であることを明確にします」だとさ。おいおい、日本の教育水準はそんなに低くはないぞ。日本人をナメてるのか? イルカが哺乳類だなんて事は乳幼児を除けばほぼ全ての日本人は知っている。バカにするな!
日本が国際鯨保護狂会・・じゃなくて国際捕鯨委員会からの脱退を表明したため、風当たりが強くなるとは予想していたが、国内からこんな動きが出るとはね。大英帝国でデモが行われ、東京オリンピックボイコットを叫んだのに対しては「どうぞご自由に」だったが、国内から出てくるとはこれまた情けない。国際捕鯨委員会というのはそもそも、鯨の資源管理をし、各国に捕獲量を割り当てるためのものであるはずだが、科学委員会が資源量は十分にあるとしても総会で否決される。鯨は可愛いとか頭が良いとか、訳の分からんことをぬかす連中の巣窟となり、まともな議論もできなければ資源管理委員会としての役割を放棄しているのであるから、脱会して当然。奴らは世界中の海を鯨が埋め尽くしても、鯨は絶滅しかけているとか言うだろう。まあ、そうなる前に餌が無くなって、勝手に餓死して数は減るだろうが。今海洋資源が全般的に減っているのは、乱獲もあるだろうが、鯨が増えて餌として相当量が食われているからだという説もある。
ましてやイルカについては国際鯨保護狂会の管轄外だから、文句を言われる筋合いはない。個体数だって相当数いる。しかも食い始めたのは昨日今日の話ではない。私の故郷では縄文時代の遺跡からイルカの骨が出土するそうだ。捕獲して食って何が悪い。イルカは頭がよいから食べてはいけないなんてのは、人種差別にも通じる偏見的な考えであると私は確信する。イルカだろうがニワトリだろうが、生きていることには変わりない。
太地町は地形を見れば農業にあまり適さないことは容易に想像できる。現在(2016年のデータ)でも太地町の農業生産額は1千万円程度で、全国1679位(1719市町村中)、生産額の全てが果物だという。一方、良い入り江があり、昔から漁業で食べてきたことはこれまた容易に想像できる。ところが、イルカが大挙して出没すれば、入り江の中の魚を根こそぎ食い漁っていく。沿岸漁業従事者からすれば紛れもなく、海のギャングである。獲らなければ死活問題だ。それと、イルカは一頭捕獲すれば、かなりの人の貴重なタンパク源となる。そんな土地柄だから、遅くとも江戸初期には組織的な鯨・イルカ漁が成立したとされており、これはもう立派な伝統であり文化である。私は南氷洋のミンククジラ漁については積極的な賛成派ではないが、太地町のような伝統的な鯨・イルカ漁はその土地の文化として尊重すべきだという見解だ。もちろんうちの故郷でもやって欲しいがね。昔は皮付きの肉が入手できたが、今では全然手に入らない。イルカの皮付き肉と根菜の煮込みは、私のソウルフードの一つなのである。
さて、この訴えをした団体は、どうやら動物食を否定する団体だそうだ。動物を食べたりするのはダメだし、他の命に迷惑をかけず、充実して生きていくという、大層ご立派な方々だそうだ。他の命に迷惑をかけず・・ってことは、植物だって命だよ・・ね?
私が思うには、植物を食べるのは残酷だ。ニンジンやネギは、放っておけば芽が出てきたり茎が伸びてきたりするだろう。ジャガイモだって芽が出てくる。つまり生きている。葉っぱだって細胞はしばらくの間生きている。それを生でバリバリ食ったり、細胞が生きたまま釜ゆでの刑にして食うなんて、何と残酷なことか。そもそも刈り取ったり引っこ抜いたりするのは残酷だろう。動物を屠殺するのと何が違うって話だ。どちらも生きている。痛がったり苦しんだりしない(あるいは痛がったり苦しんだりしているのかもしれないが人がそれを理解できていない)からって、植物なら良いと言うのであれば、あまりにも想像力がなさ過ぎる。
まあ、動物を食べるなと主張するのは勝手だし、私とは完全に相容れないから勝手にどうぞという感じだが、そんなに動物食(牛乳や卵も含めて)を否定するのであれば、どうぞ、ビタミンB12欠乏症で苦しんで下さいな。私が知る限り、動物性食品以外でビタミンB12を含んでいるのは海苔くらいのものだ。嘘だと思ったら文科省が公表している食品成分表を検索してみるとよい。穀物、野菜、果物、芋類は、ことごとく0またはTR(検出はするが定量はできない=栄養摂取の観点からは全く期待できない)のどちらかだ。ちなみにその海苔についても、海苔のビタミンB12は、含有量は十分でも吸収効率が悪く、栄養的には評価できないとする専門家もいるようだ。おっと、発酵法で作ったビタミンB12製剤も、その培地に肉エキスとか使っていたら当然ダメですよね!
人間の腸にはビタミンB12を産生する菌は居ない訳だし、数百万年前に人類の祖先が海で海苔を採取して食っていたとは思えないので、人間が健康に生きていくためには何かしらの動物性食品が必要であることは明らかであり、我々の祖先はそのような暮らしをしていたはず(実際動物の骨とか狩りの道具は各地の遺跡から発見されているわけだし)。動物を食うなと言うのは、人類の進化の過程までも否定することにはならんのか?
まあ、少なくともカンガルーを食っているような国とか、狐を遊びで追い回していたような国とか、油を獲るためだけに鯨を殺しまくっていたような国の連中に文句を言われる筋合いはない。
プラチナ萬年筆は昨年、主力商品である#3776センチュリー(ゴールド装飾タイプ)の新色・シュノンソーホワイトとローレルグリーンを投入。キャップリングのロゴをエッチング加工することにより、文字を立体的に表現するなど、より高級感を持たせているが、価格は3,000円上がって13,000円。そしてそれに追従するように、従来からあったブラックインブラック(ミュージックを除く)、シャルトルブルー、ブルゴーニュも同様の仕様とし、13,000円で販売している。一方#3776センチュリー・ロジウム(ニブや装飾部品等、金属部分が全てロジウムメッキされた物)は、今のところ価格据え置きで15,000円。価格が上がったのはロゴをエッチング加工したからではなく、そもそも#3776センチュリーを10,000円で販売するのには無理があり、ついに音を上げたということだろう。#3776センチュリー・ロジウムは、ロジウムメッキ仕様にしただけで5,000円も価格が高くなっていたが、一応金メッキよりも耐久性が高いという理由付けはあるものの、ゴールド装飾タイプの価格を安く抑えていたため、ロジウム装飾タイプを高めの価格設定とし、こちらで利益を確保していたと考える。
そして国産万年筆の雄・パイロットも、昨年1月、一昨年までグランセNCとして販売していた物(スターリングシルバーを除く)をグランセに統合する形でリニューアルし、価格を2,000円上げて12,000円としてきたし、今年1月にはついに、主力商品であるカスタム74を2,000円値上げし、12,000円(コース、ミュージックは14,000円)となった。これは仕様変更されていないため、すでに新価格で販売されている。また、同時にカスタム74とは軸違いとなるカスタム ヘリテイジ91も12,000円に値上げしたが、こちらはクリップにロゴが入るなど仕様変更されており、昨年までの10,000円の物と、新しい12,000円の物が、店によっては混在している。
セーラー万年筆についてはだいぶ前に、主力商品であるプロフィットスタンダードを12,000円に値上げしていたが、それによって販売が伸び悩んでしまい、数年前にプロフィットスタンダードをコストカットする形で、プロムナードを10,000円で上市した。確かにニブのメッキが省略されているが、割とディテールにもこだわっており、本当にそれだけコストカットしているの?と疑問に思っていたのだが、プロフィットスタンダードを今更値下げするわけにもいかず、かといって2,000円の価格差は販売上不利だったため、コストカットしたと理由を付けて、他社と横並びの10,000円で投入してきたというのが真相だろう。セーラー万年筆については、今のところ価格に変更はないが、今後どうするのか?
つまりは、金ペン(ペン先が金合金で作られた万年筆)のエントリーモデルが10,000円という、お決まりの価格を維持すべく、各社無理をしていたわけで、ある意味ではどこが先に音を上げるかというチキンレースみたいな事をしていたのだ。でも金の価格が高騰したまま下がる様相を見せず、ついにその価格で販売し続けることに見切りを付けたという形になる。つまり、これまで無理をして安く出していたのを、ちゃんと利益が出る適正な価格にしただけの話だと思う。この不況の折(政府は景気拡大が続いていると言ってはいるが)、値上がりするのは万年筆マニアとしては出費が増えることにもなるのだが、そもそもそんなことを続けて経営が苦しくなるのでは元も子もない。
一方でプラチナ萬年筆は昨年夏、ステンレスニブで書き味が良く、使いやすいというプロシオンを投入してきているし、パイロットも昨年、グランセからステンレスニブの万年筆を発売し、今年はカスタムNSという、やはりステンレスニブの万年筆を投入してきている。グランセもカスタムシリーズも、これまでは金ペンのみのラインナップだったのに。この動きは金ペンの価格維持が難しくなっているため、ステンレスニブで書き味や使い勝手を追求し、手ごろな価格でありながら、上位品に迫る満足感と、金ニブに迫る耐久性を出そうと努力していることの現れだろう。セーラー万年筆は今後どう動くか、注目しているところだ。なお、ヴィスコンティは10年ほど前から金ニブを廃止し、23Kパラジウムニブを採用しているが、他社は採用していない。やはり金に替わる材質はそう簡単には見つからないのだろうか。
いずれにしても国産メーカーの値上げについては、これ以上従来の価格を維持できなくなったということだろうから、受け入れるしかない。無理して経営が悪化してしまっては困る。ところで近年、万年筆は値上げ、値上げで来ていたわけだが、中には無駄に高級化して無駄に価格を上げるということをやっていた海外メーカーもあるわけで、そういうメーカーに対しては「前のやつの方が好きだったな」と、ファンの目は結構冷ややかだったりする。某社のソネットなんか、新タイプも試し書きしてみたが、私としては首軸が樹脂の旧タイプの方が好きだ(書き慣れているせいもあるだろうが)。
「営業が何もしなくても注文が入る」。多分そんなことはないでしょうね。営業の方々は日々頑張っているのだと思いますし、これだけ売れているのであれば、もし売上が下がった時に何を言われるか怖い気がする。でも、ドイツの筆記具メーカー・ペリカンは、日本での売上は好調ですし、特別生産品ともなれば、あっという間に店頭から消えてしまうことも。だから何もしなくても売れるとか言われてしまうのでしょうね。羨ましい。うちの会社なんか売れないしボーナスも増えないし、ほんと、あやかりたいわ。えっ? お前が創る商品が悪いからだって? はい、そうですね(しゅ~ん)。でもねぇ、コアなファンの方はいるんですよ。親、子、孫の3代にわたってうちの商品をご愛用下さる方もいらっしゃいます。ただ、何と言ってもブランド力が低迷しているし、知名度も低いし、取り扱う店も少ない。昔は営業上がりのお偉いさんからよく言われましたよ。「黙っていても売れる商品を創れ」って。言い返してやりたかったですけどね。「では、営業の方々は必要なくなりますね」って。
おっと、ペリカンの話でしたね。ペリカンは高級筆記具を扱っているお店であれば大抵何かしら置いてあります。小さな売り場だとクラシックM200シリーズとスーベレーンM400シリーズだけの所もありますし、町の文具店の一角の小さな売り場ですと国産しか置いていない店もあったりしますが、大きな売り場ならスーベレーン全サイズ全色が並んでいたりします。パーカーやウォーターマン、アウロラが並んでいるのにペリカンは一本もないって売り場は見たことがないですね。海外ブランドを扱う店では外せないブランドです。昔なら店主の好みで「うちは海外品はパーカーとシェーファーだよ」みたいな店があったかもしれませんが、今ではネットで万年筆を調べれば、ペリカンがすこぶる評判が良いことくらいすぐに分かりますから、選択候補に挙がってくる。だから売れる。売れればお店に置く。専門店で私が色々見ている間に、ペリカンが数本売れるなんていうこともありますね。本当によく売れています。
何故そんなに売れているかと言えば、やはりそれは書き味の良さ、品質の良さ、ほとんどが吸入式万年筆であること、オーソドックスな形状に独特のカラー(好き嫌いはあると思いますが)、そして値頃感なのでしょうか。いえ、結構高い物ですよ。モンブランの同クラス品と比べれば、お手頃感があるということです。それと、重要なのがその豊富なサイズでしょうか。それと、モンブランと違い、児童用や入門モデルもちゃんと出しています。
でも、私はすぐには飛びつかなかったですね。他にも理由はありましたが、長所であるはずの豊富なサイズが、どのサイズにするか迷うことにも繋がったのです。
ペリカン スーベレーン
上からM805ヴァイブラントブルー(限定品)、M600ボルドー、M400緑縞
M805は私の、M600とM400はとある人の所有物。
ペリカンの主な万年筆を以下に挙げます。
スーベレーンM1000 長さ147mm/177mm 軸径16mm 35g 吸入式 18Kニブ
スーベレーンM800 長さ142mm/167mm 軸径15mm 30g 吸入式 18Kニブ
スーベレーンM600 長さ134mm/153mm 軸径13mm 18g 吸入式 14Kニブ
スーベレーンM400 長さ127mm/150mm 軸径12mm 15g 吸入式 14Kニブ
スーベレーンM300 長さ110mm/129mm 軸径10mm 11g 吸入式 14Kニブ
クラシックM200 長さ127mm/150mm 軸径12mm 14g 吸入式 ステンレスニブ
クラシックP200 長さ127mm/146mm 軸径12mm 13g 両用式 ステンレスニブ
長さはキャップを閉めた状態の長さ/キャップを抜いてペン尻に挿した時の長さです。
これらは全て金装飾ですが、M805,M605,M405,M205,P205という銀色装飾の物もあります。
M800は明らかに太いですし、ニブも大きい。そして重量も一気に増し、しかも後ろ側が重くなります。これは内蔵しているインク吸入機構が樹脂製から金属製に変わるためで、キャップを外したまま書いても後ろが重くなり、M800は首軸を持って書くのには少々扱いづらくなります。M800については、胴軸部分を持ってサラッと書くと非常に書き味は良いですが、購入を考えるのであれば、ある程度万年筆に慣れてからにした方が良いと思います。M1000も同じですが、M1000はニブが柔らかく、少しの筆圧変化で字幅が太くなったりします。表情豊かな字をゆったり書くのには向きますが、常用するにはM800の方が向いていると思います。
逆に最も小さいM300は手帳サイズまたはショートサイズと呼ばれる万年筆で、手帳と共に持ち歩いて使うのが主目的になり、常にデスク上で使うには小さすぎるでしょう。それと、私はスーベレーンではM300のみ触ったことがないのですが、ニブは軟らかいという話です。基本的には2本目以降で検討するのがよいでしょうね。
というわけで、M800とM1000は万年筆に慣れた人向き、M300は手帳サイズで、一般筆記用として万人に向くのはM400とM600ということになります。で、この2つですが、ペンを収納した状態ではは7mmほど長さが違いますが、キャップをペン尻に差した時の長さは3mmしか違いません。本当に微妙な差です。軸径はM600の方が1mm太いだけです。重量は3gほど違うものの、どちらも樹脂軸として通常の範囲内ですから、重すぎたり軽すぎたりして使いづらいということはありません。ただ、こんなに微妙な差なのですが、実際手に持って書いてみると、なるほどと思います。このわずか1mmという軸径の差、椅子に座って机上で使うのにはM600の方が満足感がありますが、手帳を手に持って筆記したりする場合は、M400の方が取り回しが良い。しかも机上で使うのには明らかに物足りないという感じでもない。手の小さな方であればむしろM400の方が合うかもしれない。ちなみにニブはM600の方が硬いです。
この2つは似通ったサイズですが、触ってみると、どちらも絶妙なサイズで作られていると感じますが、本当に微妙な差なので、どちらを選ぶかは非常に迷うところです。もちろんどちらかがジャストフィットするならばそれを選べばよいのですが、私見では、迷うようならM400で良いと思います。5,000円という価格差は魅力ですし、迷うということはどちらにも大きな不満がないということでしょうから、その程度の微妙な感覚であれば、使っているうちにM400のサイズやバランスに慣れてくるわけです。なお、万年筆が初めてという方や筆圧の高い方は、M200シリーズという選択肢もあります。サイズはM400と全く同じで、ステンレスニブ。金ペンらしく撓りのあるM400よりも、初心者や筆圧の高い方には扱いやすい物です。また、カートリッジ・コンバーター両用式のP200もあります。もちろんM200もP200もしっかりとした造りの万年筆で、万年筆マニアの方でもM200を好む方は多いです。
と言いつつも、私が選んだのはM805でした。それはシェーファーのインテンシティやSGC300など、重量級の万年筆に慣れていたからで、これらに比べればM800の重量など大したことではないのですよ。しかも書き味はM400やM600よりも好みでしたし。それと、普段持ち歩いて使うとか、デスクで普段使い用の万年筆は、別にペリカンでなくても良い。その書き味にうっとりしながら書き綴るという変態的な趣味には、M800やM1000が良いような気がしたのです。
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さて、そんなペリカンにも注意すべき点があります。まずは字幅。国産のパイロットと比べるとこの通り。
パイロットの極細字はペリカンの極細字とは比べものにならないほど細い。それどころか細字も、ペリカンの極細字より細い。ペリカンは国産に比べ、全体的に2段階ほど太いのです。細字や中字といったら、もっと太いのは明白ですね。何故かと言ったら漢字を7mm罫に納めて書きたかったら、ある程度線が細くないと書きづらいですよね。一方アルファベットならこれより太くても十分に収まります。筆記する文字の違いが一番大きいですね。基本的にペリカンの極細字はパイロットの中細字程度らしいですが、個体によってパイロットの細~中くらいと、ややばらつきがあるようです。一方パイロットはばらつきが少ないメーカーで、大体こんな物だと思っていただいて結構です。私が購入したM805は、上の写真にあるようにパイロットの中細字と細字の間くらいで、ペリカンの極細字としてはやや細めの個体。そこもこれを購入した決め手の一つです。私は細字派なので。
お次は個体差。万年筆には個体差が付きものですが、特にM400はペンポイントに段差があったり、切り割りがセンターから大きくずれている物があるようです。うちの品管なら間違いなく刎ねられるでしょうねぇ。売れている理由に書いた品質の良さとは矛盾するようですが、どうも近年そういう傾向があるようです。なので現品をよく見て購入しましょう。そして、ペリカンの万年筆は、調整することでとにかく劇的に変わるようなのです。人によっては調整することを前提として購入する方もいるとか。なので「ペリカン スーベレーン 書き味最高」とかいうネット記事が上がっていても、よく読んだら調整した物だったりとかします。無調整でも書き味は良いと思いますので、書き味についてもやはり、ご自分の手で確かめて下さい。
要するに評判の良さを鵜呑みにしないことですね。つまり、この記事も参考にしないこと・・ってなっちゃいますなぁ(爆)